こんにちは。
ルーフロック幽霊部員となりかけていた王鞍です。
小川山でも屈指のクラックがひしめく妹岩。そのすぐ隣のマラ岩には初心者からレジェンドクライマーまで楽しめるルートが揃っているため、迷ったらとりあえずこのエリア、という方も多いのではないでしょうか。
人気エリアゆえに、シーズンになると「ジャックと豆の木」も「カサブランカ」も順番待ちという光景は珍しくありません。
しかし5.10代の隠れた名クラックは実はまだまだあるんです。
今回は「小川山ガイドブック」で星が一つも付いていないイチオシクラックを紹介します。

「パピヨン5.10a」
「ジャックと豆の木」のすぐ右手にある「パピヨン」はトポで三つ星が付いた2ピッチのクラックルートですが、僕が推したいのは星のない1ピッチ目。
ガイドブックには「汚れやすくあまり登られていないのでワイルド。基本ワイド登り」と書かれており、それだけでちょっと敬遠したくなりますよね…。
「ジャックと豆の木」の終了点から自然に「パピヨン」2ピッチ目を登り出すことができるため、1ピッチ目を割愛する人も多いはず。
かくいう自分もそのクチでした。
数日前なんの気なしに見上げた「パピヨン」は、誰かが掃除してくれたのでしょう、「こんなクラックあったっけ?」と思うほど乾いたキレイな割れ目が続いていました。
早速下から登ってみると、気持ちいいジャミングから体を反転させてのチキンウィング、繊細なフットホールドでのレイバックと短い中にあらゆるクライミング要素が詰まった充実の内容。
今までこんな素晴らしいクラックに目もくれなかった自分が恥ずかしくなったほど。
終了点の木が枯れかけているので、登っている人がいなければ「ジャックと豆の木」のアンカーでビレイしてもいいかもしれません。
やや緊張する1ピッチ目をクリアすると、王道⭐︎⭐︎⭐︎クラックで気持ちよくフィニッシュ。
もちろんテラスに立たずに2ピッチを繋げて登っても充実すること間違いなし。
終了点からの景色は格別です。


いずれのピッチも5.10aとなっていますが、1ピッチ目のほうが渋くて登りにくいでしょう。ピッチ間のコントラストも魅力になっているので、ぜひ両方やってみてください!

「横恋慕10a?」
こちらは星どころか、あの小川山ガイドブックをもってして調査すらされていない不遇なルート。
場所は「ジャックと豆の木」のすぐ左のルンゼ状。
このクラックも最近掃除されたのでしょうか、さすがにルンゼ内だけあって湿気っぽさは拭いきれないものの、10月初旬に訪れた際には登りに差し支えない状態でした。
ルンゼを少し詰めてから右の側壁に走ったクラックに取り付くと、出だしから体勢が悪く登りずらい。
凹角に入ると一息つけるが、そこからの甘いフレークのような溝のような形状をどう登るかが悩ましいところです。
全体的にワイルドで核心はプロテクションもとりづらいため、5.10代を安定して登れる経験があったほうがいいでしょう。
それにしても「横恋慕」というルート名の由来は、ちょっぴり危ういしっとり感からか、それとも初登者が中島みゆき好きだったからか…。
いずれにしてもどこか切なささえ感じるいぶし銀な割れ目、私は好きです。
「もうこれっきりで よすわ」と言ってもやめられないのがクライミングですから。
